大田の漁業青年たちの挑戦 ー昭和の海苔研究ことはじめー
東京の海苔養殖は全国に先駆け、江戸時代中期に品川・大森の海で始まり、盛んになっていきました。明治時代以降は羽田も海苔養殖を手がけ、東京では昭和37年の漁業権放棄が決定するまでの約250年間続けられました。
昭和期は昭和23年の全国海苔増殖協会、昭和30年の海苔増殖振興会の創設と、海苔増産のための研究が全国的に発展した時代でした。
昭和3年には大田区内にも東京府水産試験場が設置され、昭和24年には大田区の漁業青年たちが海苔研究会を創始し、水産試験場の影響を受けて人工採苗の実験などの活動を精力的に行いました。その海苔に対する熱意が、その後の海苔資材保存会の保存活動、『大森漁業史』の編纂などに表れています。
今回の企画展では、水産試験場や各研究会の歴史を紹介し、当時の様子を記録した刊行物・写真などを展示します。本展を通じて、昭和期の大田区を中心とした漁業青年たちの研究や活動、海苔生産終了後の元生産者の資料の保存・記録といった活動への理解を深める機会としていただければと思います。
新収蔵品展 -海苔の街を伝える道具たち-
大森 海苔のふるさと館は2018年4月に開館10周年を迎えました。当館は施設設立から現在まで、元海苔生産者をはじめ、多くの地域の人々に支えられながら活動を行ってきました。
開館以来、ふるさと館には海苔生産用具をはじめ、様々な資料が寄贈されました。それらはかつて大田区で暮らしていた人々の暮らしぶりを伝える貴重な資料ばかりです。
開館10周年であるこの機会に、開館以降の新規収蔵品の中から、海苔生産道具と、海苔の街を象徴する資料を展示し、寄贈していただいた方々への謝意を表します。それと同時に、各資料を通じて海苔の街であった大田区の歴史を振りかえり、地域の資料に目を向けるきっかけとしていただければと思います。
絵画の中の海苔づくり
海苔養殖は江戸時代中期頃から、品川から大森にかけての沿岸部で盛んになったとされています。そして昭和37年の漁業権放棄までの約300年間、大田区沿岸部は日本有数の海苔産地でした。
海苔は江戸近郊の風物詩のひとつとして、人々に馴染み深いものでした。そのため海苔は、多くの浮世絵や版画で、題材として取り上げられました。
本企画展では、海苔養殖の様子を描いた浮世絵・版画などの絵画を展示いたします。絵画には当時の海苔養殖風景が詳細に描かれており、人々の注目を集めていたことが分かります。
また絵画には、当館で展示している道具を使う場面が描かれています。ぜひ実物と絵画を見比べて、その様子をご覧ください。
長期間の展示にともなう劣化を避けるため、複製にて展示しております。
写真でめぐる海苔の街の記憶
大森 海苔のふるさと館は、平成20年4月に開館し、平成30年4月に開館10周年を迎えます。当館はこれまで、元海苔生産者をはじめ、多くの方々に支えられながら活動してきました。
当館には開館以来、地域の方々からさまざまな資料が寄せられています。とりわけ写真には、海苔生産風景、街並みの変化、神社の祭礼、日常の暮らしぶりなど、撮影した方々にとって印象的な場面が記録されています。写真からは当時の海辺の街の様子が、ありのままに伝わってきます。
本企画展では、開館10周年を機に、これまでに寄せられた写真を展示して、かつての街の様子をひもときます。展示を通じて、身近な地域の風景を振り返りながら、海辺の街に暮らす人々の「記憶」に耳を傾けていただければと思います。