江戸中期から大正期までの約200年間、海苔の養殖資材として木ヒビと竹ヒビが使われましたが、材料の価格高騰や沖へ拡張する漁場に対応するために新たなヒビの研究が行われました。昭和初期には現在の海苔網の原型が誕生しました。
海苔網は、竹ヒビに比べて安価で軽く、製作が簡単でより多くの収穫を得ることができました。さらに、海苔網を使用することで、潮汐の影響を受けない海苔採りが可能になりました。海苔網の誕生は、海苔養殖に一大改革をもたらしたといえます。
昭和初期の海苔網の誕生と共に、新興漁場や水産試験場の実験地では普及が始まりました。大田区では羽田で昭和初期に実験が開始されました。しかし、大森では沖の漁場で使用する結いつけヒビが考案され、竹ヒビでの養殖が順調だったことから、海苔網が導入されたのは昭和20年代に入ってからでした。終戦後、経済の復興や科学的な技術の導入、若者による研究会の発足などもあり、大森の海苔養殖は急速に技術の成長を遂げたのです。
今回の企画展では、海苔網の導入による海苔養殖技術の変化や、海苔網による海苔養殖の方法について取り上げます。漁業権放棄までのわずか20年弱の間に行われた現代の海苔養殖の黎明期の姿を振り返ります。